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死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明(H27/12/25)

死刑執行に強く抗議し,改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明

2015年(平成27年)12月25日
香川県弁護士会
会長 馬 場 基 尚

本年12月18日,東京拘置所及び仙台拘置支所において各1名に対して死刑が執行された。第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは,2015年6月以来8回目で,合わせて14人になる。
日本弁護士連合会は,2015年12月9日,岩城法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して,死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し,死刑制度に関する世界の情勢について調査の上,調査結果と議論に基づき,今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと,そのような議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。今回の執行はその9日後,就任後わずか2か月で執行がなされたものであり,拙速の批判を免れない。
死刑の廃止は国際的な趨勢であり,世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが,2014年に実際に死刑を執行した国は,日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・アメリカの3か国のみであるが,韓国とアメリカの19州(なお,アメリカネブラスカ州は本年5月27日に死刑廃止法が成立。)は死刑を廃止又は停止しており,死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。
2014年2月には,裁判員裁判の経験者20名が,当時の法務大臣に対し,死刑執行を一時停止したうえで死刑についての情報公開を求める要望書を提出した。裁判員経験者らの中には死刑判決を担当した者も含まれており,「一般の刑罰と比べて死刑は明らかに一線を画するもの。壮絶な葛藤と,今なお抱える重圧がある」と要望書の中でその心情を表現している。元裁判員らは当該要望書において,①執行の一時停止,②死刑に関する詳しい情報の公開,③死刑問題の国民的議論を促すことを法務省に求めており,裁判員制度が始まって以降,よりダイレクトに刑事政策制度を担うこととなった市民の側からも,死刑制度についての情報公開と更なる議論が必要という声が上がっている。今回の執行のうち1件は,裁判員裁判による死刑判決の初めての執行であったが,こうした裁判員を経験した国民の声に国が応えることはなく,死刑を巡る我が国の状況は一向に変化がないままである。
さらに,2014年3月27日には,静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが,極めて長期間死刑の恐怖の下で身柄を拘束された結果,その心身に不調を来している。また,もし死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。この袴田事件の再審開始決定により,えん罪によって死刑が執行されるという,死刑制度がはらむ重大な問題が現実のものであることが浮き彫りになったのであって,今こそ死刑について議論を深めなければならないときである。
当会は,これまでの死刑執行に対しても抗議してきたところであるが,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,改めて死刑執行を停止し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の廃止について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。

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