死刑執行に強く抗議し、死刑執行を停止し死刑廃止に向けた全社会的議論を深める取組を求める会長声明
令和7年6月30日
香川県弁護士会
会長 八 木 俊 則
2025年6月27日、東京拘置所において1名の死刑が執行された。石破内閣において死刑が執行されたのは、今回が初めてである。
当会は、2011年10月以降20回にわたって「死刑執行に強く抗議し、死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を深める取り組みを求める会長声明」を発出し、死刑執行に対し強く抗議してきた。また、日本弁護士連合会は、2016年10月7日の第59回人権擁護大会において、「2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであること。死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること。」等を内容とする宣言を採択し、死刑廃止に向けての社会的な問題提起を行い、その後になされた死刑執行に対しても強く抗議していた。このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり、当会は改めて強く抗議する。
国際社会の潮流は死刑廃止に向かっている。2018年12月17日、国連総会本会議において、史上最多の支持を得て死刑執行停止を求める決議案が可決された。2022年12月末現在、世界で死刑を廃止又は停止している国は144か国に上っている。死刑を存置している国は55か国であるが、2022年に実際に死刑を執行した国は20か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、このうち、韓国は死刑執行を停止し、米国においては死刑を廃止する州が23州に上っているのであって、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。
袴田事件の第二次再審請求事件について、2014年3月27日には、静岡地方裁判所が再審開始を決定し、その後、東京高等裁判所が同決定を取り消したものの、最高裁判所がこれを取り消して審理を差し戻した後、東京高等裁判所は、2023年3月13日、静岡地方裁判所の再審開始決定に対する検察官の即時抗告を棄却する旨を決定し、その後に開かれた再審公判において、静岡地方裁判所は、2024年9月26日、袴田氏に対する無罪判決を言い渡し、検察官は上訴権を放棄して、袴田氏の再審無罪が確定した。もし、袴田氏に対し死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。この袴田事件の再審無罪判決により、えん罪によって死刑が執行されるという、死刑制度がはらむ重大な問題が現実のものであることが浮き彫りになったのであって、今こそ死刑について議論を深めなければならない。
当会は、これまでの死刑執行に対しても抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止に向けての全社会的議論を深めていく取組を行うことを求めるものである。