改正貸金業法の完全施行後2年を迎えての会長声明
平成24年9月11日
香川県弁護士会
会長 白井 一郎
「上限金利の引き下げ」「総量規制の導入」等の画期的な内容を含む貸金業法,出資法の改正が2006年12月に行われ,2010年6月18日に完全施行されて2年が経過した。
現在,5社以上の借り入れを有する多重債務者が法改正時の230万人から44万人に激減し,自己破産者は17万人から10万人に,多重債務による自殺者は1973人から998人に半減する等,これらの法改正は多重債務問題解決のために大きな成果を上げている。
ところが,近時,与野党の議員の一部では,正規登録業者から借りられない人がヤミ金から借り入れをせざるを得ず,潜在的なヤミ金被害が広がっている,あるいは零細中小企業の短期融資の需要がある等と主張して,金利規制や総量規制の見直しの議論が起こっている。
しかしながら,ヤミ金については,相談件数も警察の検挙件数も減っており,被害規模も小型化する等ヤミ金被害が広がっている事実はない。我が国において格差社会が進展し,貧困層が拡大していることに鑑みると,正規の業者から借りられない人に簡単に借りられるようにするのではなく,むしろ「高利に頼らなくても生活できる」セーフティネットの再構築や相談体制の更なる充実こそが重要である。
さらに,中小企業に対して,国は緊急保証,セーフティネット貸付及び中小企業等に対する金融円滑化対策を実施し,地域金融機関等による支援策を行っている。このように貸金業者による個人零細事業者への総量規制の例外的貸付も一定の実績を有している現状下で必要な対策は,「短期の高利の資金」提供ではなく,総合的な経営支援策の拡充である。
したがって,一部議員の金利規制,総量規制の見直しに関する主張はその前提を欠いている。
よって,当会は,上限金利の引き上げと総量規制撤廃に強く反対するものである。