検察官の定年延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明
2020年(令和2年)5月12日
香川県弁護士会
会長 徳 田 陽 一

1 政府は、本年1月31日、東京高等検察庁検事長の定年を半年延長する閣議決定を行った。
 しかし、検察官の定年については、一般の国家公務員とは異なるものとして国家公務員法の特例を検察庁法で規律し、同法第22条は、「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は 年齢が63年に達した時に退官する」と明記しており、定年による退職に例外を認めていない。また、これまで、国家公務員法第81条の3第1項は検察官には適用されておらず、今回の閣議決定は立法当時からの公権解釈に反している。
2 ところが、政府は、これまでの公権解釈では検察官は定年延長ができないとされてきたが、検察官にも国家公務員法第81条の3による勤務延長の規定が適用される旨答弁し、この法解釈を変更したと主張し、上記閣議決定を行った。
 そもそも検察官が一般の国家公務員と異なり検察庁法により規律されるのは、公訴権を独占する準司法機関である検察官は、厳正公平、不党不偏が求められるためである。他の一般職員と同じように、政府による検察官の定年に介入することを許せば、検察官の政治的中立性や公平性を害し、ときには政治家をも捜査起訴する検察官の職責を十分に全うさせることができなくなる。
 本閣議決定は、検察庁法の規定に違反するとともに、検察官の政治的な中立性や職務の独立性を侵害し、検察官が刑事司法手続の一翼を担うことに鑑みれば、憲法の基本理念である三権分立をも揺るがすものである。
3 さらに、政府は、本年3月13日、国家公務員法等の一部を改正する法律案(検察庁法の一部改正を含む)を国会に提出した。
同法律案によると、検察官の定年を63歳から65歳に段階的に引き上げ、63歳になった者は、原則として最高検次長検事、高検検事長、検事正という役職に就任できなくなるところ、「内閣」が「職務遂行上の特別の事情を勘案し(中略)内閣が定める事由があると認めるとき」に該当すると判断すれば、特例措置として63歳以降もこれらの地位を続けさせられることになっている。
 同法律案によれば、結局、時の内閣の意向次第で、検察官の人事が可能になり、権力犯罪をも捜査し、起訴するという強い権限を持つ検察官の独立性・公平性が担保されている検察庁法の趣旨が根底から揺るがされることになる。 そして、同法律案は、新型コロナウイルス対策急務の中、本年4月16日、衆議院本会議で審議入りした。このような緊急時において、憲法の基本原理を揺るがす法律案を押し通そうとする政府の姿勢は厳しく批判されなければならない。
4 よって、当会は、検察官定年延長の閣議決定の撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち、検察官の定年ないし勤務延長に係る「特例措置」に係る部分を撤回し、三権分立を定めた憲法の基本理念を遵守し、検察官の独立性が維持されることを強く求めるものである。