東京医科大学医学部医学科一般入試得点操作に関する会長談話
2018年(平成30年)8月14日
香川県弁護士会
会長 滝 口 耕 司
 平成30年8月7日、学校法人東京医科大学内部調査委員会が作成した平成30年8月6日付け調査報告書(以下「調査報告書」という。)により、東京医科大学医学部医学科(以下「東京医科大学」という。)が、平成30年度一般入試二次試験において、小論文の点数(満点100点)に全員0.8の係数をかけ、そこに受験生の属性に従い加点(現役男子20点、1浪男子20点、2浪男子20点、3浪男子10点、4浪男子0点、女子0点)を行う得点調整を行ったことが判明した。
 この得点調整によれば、例えば、二次試験小論文において100点を取った現役・1浪及び2浪男子受験生は100点として扱い(100×0.8+20=100)、同じく100点だった女子受験生(現役浪人の別は問わない)及び4浪受験生は80点として扱う(100×0.8+0=80)結果となる。この得点調整が、二次試験において、女子受験生を女性であることのみを理由として不利に取り扱うものであることは明らかである。
 また、調査報告書は「女子よりも男子を優先すること及びその手法として全員の得点に係数をかけた上で属性に応じた一定の点数を加算することは、少なくとも平成18年度入試から行われていたようである」とし、前記得点調整が10年以上の長期にわたって行われてきたとしている。 
 
 確かに、私立学校においては、その自主性が尊重されるべき(教育基本法8条)であり、また大学においては、学問の自由(憲法23条)の制度的保障である「大学の自治」が認められ、その自主性、自律性等が尊重されるべきであって(教育基本法7条2項)、入学試験における合否の判定は、本来、学校の最終判断に委ねられるべきものである。
 しかし、東京医科大学が行った、二次試験において女子受験生への加点を0点とする等の前記得点調整は、女子受験生を女性であることのみを理由に入学試験において不利益に取り扱うものであり、性別のみによる不合理な差別以外の何物でもない。憲法14条1項、教育基本法4条1項に違反し、断じて許されず、重大な違法であることは明らかである(民法1条2項、同90条)。
 東京医科大学の前記得点調整は、女子受験生から、学問の自由(憲法23条)、能力に応じてひとしく教育を受ける権利(憲法26条1項)、ひいては医師という職業を選択する自由(憲法22条)を不当に奪うものであって、女子受験生が被った損害は大きいといわざるを得ない。
 
 そこで、当会は、東京医科大学に対し、さらなる詳細な調査を行うこと及びその調査結果の開示、不当な取扱いを受けた受験生に対する速やかな救済と徹底的な再発防止策の策定・実施を求める。
 また、文部科学省学校基本調査(平成28年)によれば、大学学部別入学試験合格率の男女比(女性合格率/男性合格率)が1.0を下回るのは医学部だけであり、しかも、女性の合格率は男性の0.81倍ということであるから、医学部においては、女性の合格率が男性に比して顕著に低いといえる(日本女性医療者連合理事種部恭子氏分析)。111回医師国家試験における合格率の男女比(女性合格率/男性合格率)は1.031であり、女性合格率が1.0を上回っていることにも照らせば、入学試験における前記傾向は、不自然であるといわざるを得ない。また、「従来から医学部受験においては女子受験生が不利であることが知られていた」との報道もなされている。
 これらに照らせば、東京医科大学のみならず、他の医学部の入学試験においても、女性であることを理由とする不合理な差別が行われている可能性があるといわざるを得ない。そのような違法を放置することは、前記のとおり女子受験生の学問の自由(憲法23条)、教育を受ける権利(憲法26条)、職業選択の自由(憲法22条)を不当に奪うものとして断じて許されないのみならず、大学全体に対する社会的信頼も大きく損ないかねないものとなる。
 
 そこで、当会は、国内に存する全ての医学部に対し、各年度の入学試験における男女別の出願者数・受験者数・一次試験合格者数・二次試験合格者数等、基礎的なデータを即座に公表するとともに、性別を理由とする得点調整や不利益な措置が取られていないかについて速やかに調査し、その結果を公表することを求める。
 また、同時に、文部科学省に対しては、大学入試におけるこのような性別に基づく不合理な差別を一掃し、男女が平等な入試を実現するため、徹底した調査と原因の分析、徹底的な再発防止策の策定と実施、被害者救済の実施を求めるものである。