死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し死刑廃止に向けた全社会的議論を深める取組を求める会長声明
2017年(平成29年)12月25日
香川県弁護士会
会長 滝 口 耕 司
 本年12月19日,東京拘置所において2名に対して死刑が執行された。いずれも弁護人が付いて再審を請求しており,うち1名は犯行時少年であった。上川法務大臣が本年8月に就任して以降初の執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは12回目で,合わせて21名になる。
 
 当会は,2011年10月以降12回にわたって「死刑執行に強く抗議し,死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を深める取り組みを求める会長声明」を発出し,死刑執行に対し強く抗議してきた。また,日本弁護士連合会は,2016年10月7日の第59回人権擁護大会において,「日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであること。死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること。」等を内容とする宣言を採択し,死刑廃止に向けての社会的な問題提起を行い,その後になされた死刑執行に対しても強く抗議していた。このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり,当会は改めて強く抗議する。
 
 死刑の廃止は国際的な趨勢であり,2016年12月末現在,世界で死刑を廃止又は停止している国は141か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが,2014年に実際に死刑を執行した国は日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国35か国の中で死刑制度を存置している国は,日本・韓国・アメリカの3か国のみであるが,韓国とアメリカの3分の1以上の州は死刑を廃止又は停止しており,死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。
2016年12月には国連総会において全ての死刑存置国に対し死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議が採択されている。2014年2月には,裁判員裁判の経験者20名が,当時の法務大臣に対し,死刑執行を一時停止したうえで死刑についての情報公開を求める要望書を提出した。裁判員経験者らの中には死刑判決を担当した者も含まれており,「一般の刑罰と比べて死刑は明らかに一線を画するもの。壮絶な葛藤と,今なお抱える重圧がある。」と要望書の中でその心情を表現している。元裁判員らは当該要望書において,①執行の一時停止,②死刑に関する詳しい情報の公開,③死刑問題の国民的議論を促すことを法務省に求めており,裁判員制度が始まって以降,よりダイレクトに刑事政策制度を担うこととなった市民の側からも,死刑制度についての情報公開と更なる議論が必要という声が上がっている。
 
 2014年3月27日には,静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。もし死刑の執行がなされていたならば,まさに取り返しのつかない事態となっていた。この袴田事件の再審開始決定により,えん罪によって死刑が執行されるという,死刑制度がはらむ重大な問題が現実のものであることが浮き彫りになったのであって,今こそ死刑について議論を深めなければならないときである。
 
 成育した環境の影響が非常に強い少年の犯罪について,少年に全ての責任を負わせ死刑にすることは,刑事司法の在り方として公正であるかも問われなければならず(2011年10月7日に高松市で開催された第54回人権擁護大会「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」),死刑に直面している者に対し,被疑者・被告人段階,再審請求段階,執行段階のいずれにおいても十分な弁護権,防御権が保障されるべきであり(同宣言),犯行時少年であった者や再審請求中の者に対する今回の死刑執行はこれらの観点からも問題があるものである。
 
 当会は,これまでの死刑執行に対しても抗議してきたところであるが,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,改めて死刑執行を停止し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の廃止に向けての全社会的議論を深めていく取組を行うことを求めるものである。