安全保障法制改定法案に反対する会長声明
2015年(平成27年)7月8日
香川県弁護士会
会長 馬 場 基 尚
1 現在、衆議院平和安全法制特別委員会において、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動協力法等を改正する平和安全法制整備法案及び新規立法である国際平和支援法案(以下、併せて「本法案」という。)が審議中である。
  本法案は、それまでの政府の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認した昨年7月1日の閣議決定を具体化するとともに、本年4月27日に日米両政府により合意された「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を国内法制化するものであり、安倍内閣は強い姿勢で今国会での成立をめざしているところである。
  しかしながら、本法案は、看過できない多くの問題点を抱えており、以下に指摘する点は特に重大である。
2 第1に、本法案は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)であれば、我が国に対する武力攻撃が発生していなくとも、自衛隊が米軍その他の外国軍隊と共に武力を行使することを可能としている。
これは、集団的自衛権の行使を容認するものであるところ、当会において昨年7月9日に発した「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議しその即時撤回を求める会長声明」にて指摘したとおり、そもそも、集団的自衛権の行使を容認すること自体、現行憲法の解釈として限界を超えるもので許容できるものではない。
3 第2に、本法案は、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)が生じたときや、「国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの」(国際平和共同対処事態)が生じたときに、「後方地域」や「非戦闘地域」のような「そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがない」地域のみならず、「現に戦闘行為が行われている現場以外の場所」であれば、地理的限定なくどこでも、自衛隊が戦争を遂行する他国の軍隊に対して弾薬の提供や兵員の輸送、戦闘機等への給油・整備等の後方支援活動を行うことを可能にしている。
このような後方支援活動は、他国の武力行使との一体化と見られるものであり、憲法9条の禁止する海外における武力行使につながるものとして憲法に違反する。
4 第3に、本法案は、国連平和維持活動のみならず、国連が統括しない有志連合等による「国際連携平和安全活動」にも自衛隊の参加を認め、その活動内容として、いわゆる駆けつけ警護や治安維持のための武器使用を認めるものである。
武力衝突に発展しかねない危険な活動において、任務遂行のための武器使用を認めることによって、武器使用による戦闘行為から、交戦状態や武力紛争に発展していく可能性が非常に高く、「武力による威嚇又は武力の行使」を禁じ、「交戦権」を否認した憲法9条に反する。そして、このような武力の行使は、自衛隊員の生命を危険にさらすとともに、武力紛争により他国の国民を殺傷し、自国の国民が殺傷される事態を招くものであり、徹底した恒久的平和主義及び諸国民の平和的生存権を定めた憲法前文にも違反するものである。
5 以上のとおり、本法案は、徹底した恒久的平和主義を定め、平和的生存権を保障した憲法前文や憲法9条に違反するもので、憲法の条項を法律で改変するものとして立憲主義の基本的理念に反し、さらに憲法改正手続を踏むことなく憲法の実質的改正をしようとする点で、国民主権の原理にも反している。
6 よって、当会は、本法案の成立に強く反対するものである。