商品先物取引法施行規則の改正(不招請勧誘禁止の例外)に対する会長声明
2015年(平成27年)4月7日
香川県弁護士会
会長 馬 場 基 尚
 経済産業省及び農林水産省は,本年1月23日,商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定めた(施行は平成27年6月1日予定)。本省令は,当初の公表案を若干修正し,同規則第102条の2を改正して,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に,顧客が65歳未満で年収800万円又は金融資産2000万円以上を有する者等について,顧客の理解度を確認し,投資上限額を設定するなどの要件を満たした場合に,不招請の訪問や電話勧誘を許容する例外規定を盛り込んだものである。
 本省令によれば,不招請勧誘の例外を確認するために,年収や資産の本人申告書面を差し入れさせたり,理解度を書面等で確認する等の方法を定めるが,これによると適合性の確認を理由に不招請の顧客に対する電話や訪問が可能となる。そして,勧誘により商品先物取引に一定の興味を持った顧客でなければこのような確認に応じることは考えにくいのであるから,実際は確認と勧誘が一体としてなされることが想定される。本省令は,事実上,商品先物取引の勧誘を不招請で行うことを許容するものであり,不招請勧誘を解禁するに等しいものである。
 また,不招請勧誘禁止の例外の要件を確認する方法として,年収や資産の本人申告書面を差し入れさせたり,理解度を書面等で確認する等の方法は,従来から多くの商品先物取引業者が同様に行ってきており,その中で業者が顧客を誘導して事実と異なる申告をさせたり,正解を教授するなどの行為が蔓延し,被害が生じてきた経緯がある。このような実態からすると,これらの手法が顧客保護のために機能するということはできない。
 本省令は,事実上不招請勧誘を解禁するに等しく,適合性の確認も機能するとは考えられないものであり,顧客保護の徹底のために不招請勧誘禁止を規定した法律の委任の範囲を超える違法なものと言わざるを得ない。
 長年,商品先物取引による深刻な被害が生じ,度重なる行為規制の強化にもかかわらず被害が減らないため,2009年(平成21年)7月,商品先物取引法改正の際,与野党一致の下で不招請勧誘の禁止が導入された。しかし,上記改正法施行後も,商品先物取引業者が顧客に対し,金の現物取引やスマートCX(損失限定取引)を勧誘して接点を持つや,すぐさま通常の先物取引を勧誘し,多額の損害を与える被害が少なからず発生しており,不招請勧誘禁止の導入に至った実態に変わりはない。
 本省令が施行されるときは,商品先物取引における被害が再び増大することが強く懸念される。本省令は,不招請勧誘禁止規定が導入された立法の経緯及び被害実態を軽視し,法が禁止する不招請勧誘を事実上解禁するに等しく,顧客保護及び取引の公正の観点から容認できるものではなく,当会はこれに強く抗議する。