司法修習生に対する給費制の存続を求める声明

平成21年10月15日

香川県弁護士会
会長 藤本 邦人

平成16年12月,司法修習生に対する給費制(給与制)を廃止して修習資金の貸与制を実施する内容の裁判所法改正が行われ,平成22年11月から施行されることとなっている。  わが国の従来の法曹資格の取得については貧富の差を問わず広く開かれた門戸であり,決して「金持ちにしか法曹になれない制度」ではなく多様な人材が,裁判官,検察官,弁護士として輩出されてきた。この点は,非常に高く評価すべきであり,また,将来もそうでなくてはならない。
司法修習生は,公務員たる裁判官・検察官になるほか,大多数は弁護士になるが,弁護士の存在は憲法上の要請であって,基本的人権を尊重し社会正義を実現するという使命のもと,国選弁護,法律援助事件,各種の無料法律相談,公益的な社会的意義のある弁護団事件,人権救済,子どもの虐待防止活動,消費者保護運動,犯罪被害者支援活動等,種々の公益活動を現に積極的に行っている。当番弁護士制度,法律相談センター事業,過疎地における公設事務所の開設など弁護士・弁護士会による各種の公益活動は,弁護士の公共性・公益性を具体的な形としてあらわしたものである。さらに,被疑者国選制度が,平成18年10月から法定合議事件に,平成21年5月から必要的弁護事件にと拡大され,全国の弁護士会がこれについて責任をもった弁護体制の確立に努力しており,平成21年5月にスタートした裁判員制度においても,法曹三者の役割は大きく,弁護士も刑事裁判に市民が参加するという重要な司法改革の推進役を果たしている。
また,わが国では,弁護士の自治の保障のもと,弁護士が純粋な民間人の立場を堅持することによって,国や地方公共団体などの公権力の濫用に躊躇することなく対峙して市民の権利を守ることを可能として,公共的利益を支えている。
このように,弁護士会・弁護士の社会的責任は,これまでより飛躍的に大きくなってきていると言え,この責務の範囲は拡大する一方であって,弁護士の公共性・公益性が決して変容することはない。
ところで,現在,法曹になるためには,長い養成期間に耐え得る経済的な裏付けが必要となっている。法科大学院の費用として,入学金や年間授業料を要し,社会人入学者は家族の生活を支えなければならない。そして,司法修習生時代においては,修習専念義務が課せられているため,アルバイトさえ行うこともできない。
現在の給費制が廃止されれば,今後,経済力のある人しか法曹になれないという状況となり,優れた信念や能力を備えた有為な人材が,経済的な事情から法曹を志すことを断念せざるを得ないという重大な事態を強く危惧させる。 したがって,平成22年11月に給費制を廃止し貸与制を実施することは,司法の人的基盤の構築に大きな支障となることが予想されるので,司法修習生に対する給費制廃止実施時期を相当期間延期し,給費制を存続するよう強く要請する。