取調べの全過程の可視化を求める決議
平成20年4月15日
香川県弁護士会
会長 吉 田 茂
1、我が国では、これまで、被疑者の取調べは、捜査官と被疑者のみしか存在しない密室で行われてきたが、密室の中では、被疑者に対する違法・不当な取調べが後を絶たず、虚偽自白が誘発され、多くの冤罪事件を生み続けている。 2、これまでの刑事裁判においては、取調べにおいて作成された自白調書の任意性・信用性が争いとなり、違法・不当な取調べであったか否かに関し、長時間にわたって取調官の尋問や被告人質問が行われてきた。しかし、平成21年5月21日から実施される裁判員裁判においては、これまでのように長時間にわたる尋問を行って、裁判員に負担をかけることは許されない。 3、検察庁においては、平成18年7月から取調べの一部について録画・録音を試行的に実施し、警察庁においても、先般、取調べを監督する部署を設置する方針を明かにするなど、捜査機関側においても、捜査官による違法・不当な取調べを防止・検証するための対策をとろうとしているかのようにみえる。 4、諸外国に目を向ければ、イギリス、アメリカ等の欧米諸国のみならず、韓国、台湾といった国・地域においても、取調べの録画・録音が実施されている。これらの国・地域において、取調べの録画・録音が実施された結果、取調べに支障を来したとか、治安が悪化したなどという例は聞かない。むしろ、取調べの状況を録画・録音を実施して、その録画等の媒体を保管することによって、裁判において自白の任意性、信用性が争点となること自体がなくなっている。 5、よって、当会は、検察官による取調べのみならず、警察官による取調べも含めて、取調べの全過程の可視化の一日も早い実現を求める。
平成20年4月15日 定期総会決議
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以上 |