弁護士報酬敗訴者負担法案に関する声明

平成16年8月3日

香川県弁護士会
会長 桑城秀樹

 弁護士報酬敗訴者負担について、本年3月2日、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」が通常国会に提出されたが、継続審議となり、本年秋の臨時国会で本格審議がなされることになっている。
上記法案の趣旨は、当事者双方が弁護士等の訴訟代理人を選任している訴訟において、当事者の双方共同の申立てがあるときは、弁護士の報酬に係る費用の一部を、訴訟費用として敗訴者に負担させるというものである。
しかしながら、上記法案は、訴訟前に、裁判外で私的契約において「敗訴した者は勝訴した者の弁護士報酬を負担する」旨の条項が記載された場合の効力には何ら触れていない。そのため、訴訟前の契約、約款、就業規則等において敗訴者負担条項が盛り込まれているとき、提訴後に敗訴者負担合意をしなかったにもかかわらず、敗訴者として勝訴者の弁護士報酬を請求されるおそれがある。
このように、上記法案は、訴訟外の事前合意を私的自治に委ね、その対象外とするものである。
これに対して、民法、消費者契約法、労働基準法等によりこのような訴訟外の合意を無効としうる余地はあろう。
しかし、市民にとりその判断は容易ではなく、むしろ訴訟提起を萎縮させるものである。
そもそも上記法案は司法アクセス促進の視点に立ち、市民に分りやすく、市民が利用し易い司法の実現を目指していた筈である。上記法案はこれに逆行し、市民の司法アクセスを阻害するものといわざるをえない。
更に、上記法案のもと、訴訟において、当事者双方が弁護士費用敗訴者負担の合意をすることはほとんど考えられない。口頭弁論終結時において、敗訴の可能性の高い当事者が負担合意をすることは考えられず、また、その見通しが双方当事者にとり困難な場合には、当事者双方が負担合意をためらうであろう。とすれば、上記法案が機能する場面はほとんどないといえよう。
むしろ、上記法案によって、訴訟前の合意が射程距離の範囲外であることが明らかとなる結果、訴訟外の合意がなされる頻度が格段に高くなると予想される。
このように上記法案は訴訟外の合意を促し、市民、特に消費者、労働者などの弱者を訴訟から遠ざける役割を果すものであると言っても過言ではない。
以上のとおり、上記法案は市民の司法アクセスを阻害し、司法制度の信頼を損なうおそれがあり、当会は強くこれに反対する。
上記法案に、訴訟前の合意が無効である旨明示しない限り、廃案にすることを強く求める次第である。

以上