司法修習生の給費制堅持を求める会長声明

平成15年10月12日

香川県弁護士会
会長 川東祥次

  1. 司法修習の給費制を廃止しようという動きが急展開をみせている。財務省の財政制度等審議会が「平成16年度予算編成の基本的な考え方について」(建議・平成15年6月9日)の中で給費制の早期廃止を提言するなど、財務省筋を中心とした圧力が強まるなか、司法制度改革推進本部の法曹養成検討会は本年7月14日の第18回検討会において、必ずしも十分な議論を尽くさないまま、「貸与制への移行という選択肢も含めて柔軟に検討する」との座長とりまとめを行った。
  2. 法曹養成制度は、単なる職業人の養成ではなく、国民の権利擁護、法の支配の実現に関わるプロフェッショナルを養成するものであり、国及び社会にとって、公共性・公益性の高い重要事項であり、弁護士にあっても、基本的人権の擁護と社会正義の実現の担い手として、日々の弁護活動のみならず、各種の公益活動、公的弁護、公設事務所、法律相談センターなど公共性の高い分野を担っている。
  3. そして、そうであるからこそ、司法修習生には、修習専念義務が課され、給与を支払う給費制が採用されていたわけであるが、この修習専念義務を課したまま、修習生に給与を支給しないことは、修習生あるいはその家庭に過度の経済的負担を強いるものである。
  4. 特に、法科大学院制度の創設により、法曹を志すものは、大学卒業後も、2年から3年の間、法科大学院に通わなければならず、大学時代の4年間を含め、司法試験を目指すものを抱える家庭に与える経済的負担は計り知れないものがある。                              かかる状況の中、給費制を廃止した場合、事実上、裕福な家庭に生まれ育ったものしか、司法試験を目指すことが出来なくなり、法曹界が偏った人たちだけで形成されるおそれが高くなろう。
  5. また、給費制に代え、貸与制を採用する意見もあるが、貸与制においても、新しく法曹になるものに対し、多額の負債を抱えさせることとなるが、そうした場合、弁護士となった者が報酬の高い仕事しかせず、弁護士に求められている公共性・公益性の高い活動を敬遠することを避けることが困難となろう。そしてこのことは、法科大学院生時代に奨学金の貸与を受けている者については、尚更あてはまる議論であり、さらに、今後、司法試験の合格者が3000人となり、法曹人口が大幅に増加することを考えると、弁護士の世界も大競争時代に突入することとなり、弁護士の収入も激減することが予想される。そうした場合、この懸念はさらに強まる。
  6. この点、裁判官、検察官になる者については、貸与した金銭の返済を免除するとの意見もあるが、前項記載の問題の解決にはつながらないし、また、裕福ではない家庭に育った修習生に対し、事実上、裁判官あるいは検察官になることを強要することにもなりかねない。
  7. ところで、医師養成の分野においては、逆に、研修医の生活を保障し、研修に専念できる環境を整えるため、国費を支出しようとうする動きがあるが、司法修習生の給費制を廃止しようとする動きは、これと全く逆の動きであり、時代の流れに逆行するものである。
  8. 今次、司法制度改革を実現するため、国は必要な財政上の措置を講じることが義務づけられているのであり(司法制度改革推進法6条)、財政事情を理由とした廃止は到底容認できない。
  9. 以上述べてきたところにより、司法修習給費制の廃止に強く反対し、同制度の堅持を強く求めるものである。
以上